5月31日外務委員会の質問通告 防衛費倍増の是非、G7広島サミット、核軍縮
G7広島サミットは内外マスコミの評価も概して好評な中で幕を閉じました。一見成功したように見えるG7広島サミットですが、私には、ウクライナのゼレンスキー大統領の来日を原因として、本来、今回のG7広島サミットで目指すべきであった、停戦合意への第一歩が印されなかったことを含め、決して納得のゆくものではありませんでした。
このような問題意識を持ちながら、来週水曜日の5月31日の外務委員会で質問に立ちます。本メッセージでは、既に外務省に通告した「質問要旨兼質問通告」につきお伝えします。
<質問要旨 兼 質問通告の内容>
1.ウクライナ戦争前から、日本の潜在的安全保障上の脅威として、対中国、対北朝鮮、対ロシアへの備えを充実させてきたと了解するが、ロシアのウクライナ軍事侵攻以降、防衛費を倍増しなければならないほどの、潜在的脅威としての上記3か国の「意志と能力」が増大しているのか。その見解を問う。
2.広島G7サミットにウクライナのゼレンスキー大統領を招聘したことのメリットとデメリットを問う。
3.「核兵器禁止条約」署名、または同会議へのオブザーバー参加をしない政府見解は理解しているが(「Noted」のみで「Accept」しているわけではない)、残念ながら説得力ある説明・理由とはいえない。
(1)日本の同条約への不参加の本音は、現状において米国の拡大抑止、核の傘を必要とする立場(核兵器の完全廃絶という出口に至るまでの間は、核保有国による核保有と核抑止提供を容認する立場)と核保有の法的禁止を謳う核兵器禁止条約の真髄が矛盾すること、更には、米国から見放され、東アジアの核保有国による核攻撃と核による威嚇のリスクに晒されることを考慮してのことか。
(2)ウクライナ戦争における米国and/or NATOの対応から感じることは「核抑止力の非対称性(仮にロシアが戦術核兵器を使用しても米国やNATOが核報復する可能性は極めて低い)。「核抑止力の非対称性」に対する見解を問う。
(3)日本が核兵器禁止条約に参加した上で核保有国の核軍縮、将来的な完全核廃絶を目指すことは決して矛盾しないと思うが、その見解を問う。核保有国のG7首脳、核の傘を必要とするG7首脳が広島原爆資料館を見た後でも、上記を目指すことは論理矛盾と見なされるのか。また、米国から見放されるリスクに晒されるのか。広島でG7を開催した意義を問う。
上記質問要旨を見れば、私の意図を理解戴けると思いますが、2.のゼレンスキー大統領の招聘の「デメリット」については説明が必要だと思います。
日本政府としてはゼレンスキー大統領の対面参加によるサプライズ効果や国内はもちろん世界中からの注目効果を狙い、その意図は成就したと思います。
しかし、(ゼレンスキー大統領の対面参加がなかった場合)元々は、G7が結束して(ウクライナ支援を含み)世界秩序の回復を目指すこと、また、グローバルサウスの有力国を招待したのは、食料・エネルギー資源高に苦しむグローバルサウス諸国へのG7諸国による支援が目的であり、日本がその旗振り役をすること、また、橋渡し役をすることをアピールする場であったと思います。
更に私としては、先の外務委員会においてもG7広島サミットをG7の結束強化や、ウクライナ支援・ロシア制裁強化の確認の場などとするのではなく、「停戦」に向けた第一歩の場にすべきだと主張しましたので、ゼレンスキー大統領の対面参加により、「停戦」への第一歩が遠のいてしまったことは残念でなりません。また、グローバルサウスへの支援と連携強化がゼレンスキー大統領の参加に耳目が集中することにより薄れてしまったことも残念です。
特に、停戦の必要性を強調し、仲介役を買ってでていたブラジルのルラ大統領との首脳会談をゼンレンスキー大統領がすっぽかしてしまったことは言語道断です。ルラ大統領は「停戦」のためには妥協が必要であり、妥協するにはロシアの主張にも(受け入れるかどうかは別として)耳を傾けるべきだ、との立場でしたので、ゼレンスキー大統領は(恐らく)不快感を持っており意図的な行動だったのでしょう。外交上失礼極まりない対応です。
因みに、このことを朝日新聞は、『ルラ氏は「ゼレンスキー氏とも、プーチン氏とも会いたい」と発言。「合意は同じテーブルにつくことから始まる。両国とも100%譲らないというのは無理だ」と指摘した。今回のG7サミットについては、「ウクライナとロシアの戦争のためにきたわけではない」として、その議論は「国連がやるべきだ」と批判した。』と記事掲載しています。
何の罪のないウクライナの人々の犠牲をこれ以上増やしてはならないことは当然です。しかし、世界中の人々が無意識の内に陥っていることですが、(侵略されている)ウクライナ人の犠牲はこれ以上出してはならないと強く思う一方、ロシア人の犠牲については何ら気にも留めない風潮があります。嘗ての日本を思い出してください。何の罪もない普通のお父さんやお兄さんが赤紙一枚で徴兵され、戦地に赴かざるをえなかったのです。今最前線で戦っている多くのロシア人もプーチン大統領の犠牲者です。また、ウクライナ戦争による食料の高騰や輸送困難により、何の罪もないアフリカや中東の国々の貧困層が飢えや餓死に直面しています。何の罪もない人々をこれ以上犠牲にしないためにも一刻も早い「停戦」を実現すべきです。
それゆえ、来週の外務委員会において、再度上記の問題意識を訴え、年内の議長国である日本政府が停戦に向けた一歩を踏み出すよう、促していくつもりです。
テレビ中継はありませんが、インターネット等で是非応援してください。
吉良州司