米国第二次トランプ政権誕生に思う その1
遅ればせながら新年おめでとうございます。
ご無沙汰お許しください。孫たちの来襲、地元での新年行事対応、その後も体調も芳しくない状態が続くなどして、新年挨拶もしていなかったことご容赦願います。
通常国会開会を24日今週金曜日に控え、昨日あたりからようやく体調がよくなってきたところです。
昨年は総選挙でのご支援をはじめ、応援戴きありがとうございました。今年もよろしくお願い致します。
年末年始は孫たちと過ごす幸せを感じながら、内外の諸課題につきあれやこれや考えていました。本メッセージではその考えたことの一端をお伝えしたいと思います。
米国時間の1月20日に第二次トランプ政権が始動しました。
就任前からグリーンランドを買うだの、パナマ運河をよこせだのと、「力による一方的な現状変更の試み」を堂々と公言してはばかりません。
今の世界の分断の本質は、我が国を含む先進諸国はロシアや中国が対象なら、「力による一方的な現状変更の試み」などを痛烈に批判する一方、対象が米国となると、本音を語らず、目をつぶってしまい、結果として「力による横暴」を容認してしまうことにあります。
そのようなダブルスタンダードのオンパレードに対してグローバルサウス諸国が偽善を感じ取り、ロシア支持、中国支持まではいかなくとも、少なくとも米国や西側先進諸国に付いていこうとはしません。
多くの人々に豊かさをもたらしてきた先進民主主義国は今大きな壁に直面しています。自由主義経済が国全体の経済を発展させ、人々の暮らしを豊かにする。生活水準の向上と並行して国全体の教育水準も高くなり、自立した国民による民主主義がうまく機能して、より多くの国民の要望が政治に反映される。このような自由主義経済と民主主義の好循環は今や過去のものとなりつつあります。自由主義経済と民主主義の好循環どころか、自由主義経済が格差、分断を産み、格差と分断の結果生じる不満のはけ口として、極端な政治主張が支持され、無視できない勢力に伸長する結果、民主主義も機能不全に陥っています。その最たるものが米国のトランプ政権の誕生だと思います。
とはいえ、私は自由主義経済の信奉者ですので、自由主義経済そのものを否定するつもりは全くありません。日本の場合、自由主義経済が機能していないことが停滞の原因であるとすら思っています。
しかし、USスチールの日本製鐵による買収合意を政治が介入して阻止するなど、自由主義経済下では本来あってはならないことです。自由度が高い自由主義経済は効率的な発展をもたらす一方、ある程度の格差を生じさせてしまいます。それを政治的社会政策により、格差を最小限に抑えていくことが自由主義経済と政治の役割分担だと思います。政治が経済そのものに過度に介入することはあってはなりません。
我が国でも「経済安全保障」という名のもとに自由な経済活動に政治が過度に介入することに対しては厳しい目を向けることが重要だと思います。
先程、「力による一方的な現状変更の試み」について触れました。歴史は連続しています。いつの時点の「現状」が正しい現状なのか。どの国の利益となる「現状」なのか、このことについて、原点に立ち返った視点、思考が重要です。世界の紛争、戦争もその多くが、現状に不満を持つ民族がいて、自分たちから見た正しい現状、あるべき現状をつくりたいと考えていることが多くあるからです。
クルド人はイラン、イラク、トルコ、シリアの4か国に分散して暮らしているなどというコメントを聞いたことがありますが、そうではありません。元々クルド民族は今住んでいる地域で暮らしていたわけですが、当時の西欧列強が植民地や委任統治領として勝手にクルド人が住む地域を分断したのです。また、ウクライナ戦争も第二次世界大戦後の最も大きな現状変更である東西冷戦の終結とソ連の崩壊、ソ連崩壊に伴う旧ソ連内共和国の、そのままの独立にその原因があるからです。(詳しくは国会報告号P3~4参照)
第二次世界大戦時に日本が戦った相手諸国は「連合国」ですが、英語表記は「United Nations」です。今、私たちが「国際連合」と呼んでいるニューヨークに本部を置く国際組織の英語表記は「United Nations」であり、中国も同じ敗戦国のドイツも「国際連合」のことを自国語で「連合国」と表記しています。つまり、現在の「現状」は第二次世界大戦の戦勝国がつくった秩序であり、戦勝国の利益にかなった国際秩序です。日本も戦後、敗戦国ではありながら、米国と同盟関係となり、経済的にも戦勝国である西側先進国が中心の、戦後国際秩序が日本の国益にかなっていたからこそ、積極的にこの秩序を受け入れ、また、米国を中心にそれを守ることに協力してきたのです。
今、その戦後の米国覇権下の国際秩序に異議を唱え、猛烈な勢いで挑戦しているのが中国であり、ロシアもソ連崩壊時の(ロシアの側から見れば)矛盾だらけの現状を変えたいと思っています。米国は世界の米国覇権を脅かす存在を許さないということで執拗なまでに中国叩きをやっています。しかし、我が国として、米国と全く同一歩調でもって中国叩きに加担することが現在の日本の国益にかなっているのか、トランプ政権誕生を契機としてじっくり考える必要があると思います。
この時点でかなり長くなってしまいましたので、続きはそう遠くない時期の次号でお伝え致します。
吉良州司