2025年参議院選挙の争点
7月3日から参議院選挙が始まり、熱戦が繰り広げられています。地元大分選挙区では、長年親密に交流している吉田忠智さん(立憲民主党公認候補)を応援しています。
本メッセージでは、各政党が訴え、マスコミも報道している「物価高対策」などについて、参議院選挙で本来訴えるべきこと、また、私自身が訴えていることを4点に絞ってお伝えします。
1.物価高対策
野党は「軽減税率部分の暫定的廃止(消費税8%からゼロ%へ)」「消費税の5%への軽減」「消費税の廃止」など、微妙な違いはあれど、消費税の減免を前面に打ち出しています。一方の自民党は「給付2万円の正当性」を訴えています。
野党各党が何故批判しないか、と悶々としていることがあります。それは、何故アベノミクスをもっと強く批判しないのか、ということです。自民党が「即効性のある物価高対策」を強調するのはお門違いも甚だしいと思うからです。
何故なら、安倍晋三政権が徹頭徹尾追求していたことこそが「物価高」だったからです。思い出してください。まだ、「賃上げ」が普及する前、少なくとも「賃上げ機運」が盛り上がる前から、異次元の金融緩和を駆使しながら2%の物価上昇を日銀黒田総裁と二人三脚で目指していたのが自民党ではないですか。また、異次元金融緩和により実質的に円安を誘導していたのがアベノミクスではないですか。その効果があって、輸入物価が高騰し、今の物価高に拍車をかけているのではないですか。
そもそも、詳細説明は割愛しますが、「失われた30年」の間に、他の先進国が賃金上昇と並行して大きく経済成長する中(それゆえ世界の物価が上昇しても、その高くなった物資を購買する経済的余裕がある)、日本だけが賃金横ばい、停滞、全く経済成長してこなかった(少なくとも世界標準である米国ドルベースでは全く経済成長していない)ことが、多くの国民が物価高に苦しむ原因ではないですか。
その自民党がアベノミクスの反省や否定もなく「物価高対策」や「2万円給付の正当性」を強調し、正義の味方を演じることの矛盾をもっと強調すべきだと思います。物価高を追求してきた自民党に物価高対策を訴える資格がないことを一刀両断すべきだと思います。
物価高対策の本丸は、自民党の「業界優先政治」を「生活者優先政治」へと転換すること、また、金利水準を正常化することによる行き過ぎた円安の修正と輸入物価高の抑制です。これらのことは本メッセージでは割愛しますが、先日の「吉良州司セミナー」において、資料も提示しながら充分に説明したところです。
2.財源論争とブラジル留学時代の悲惨な思い出
「2万円給付」と「消費税減税」の財源を巡って不毛な議論が続いています。
消費税は軽減税率を含め減免、廃止すべきではありません。
日本国債の健全性、日本円の価値の維持(暴落阻止)は勿論、将来世代の負担増につながる消費税廃止や軽減を軽々に訴えるべきではありません。「税収増を国民に還元すべき」といった議論は不毛中の不毛の議論です。本来は借金の返済に充てるべき税収増です。
多くの国民は、国の借金を外国資本に頼ることの悲惨さをご存じないと思います。
私は、1か月後には自国通貨の価値が半分になる時代のブラジルで生活していました。当時のブラジル通貨はクルゼイロと言いましたが(今はレアル)、対外債務1200億ドルを抱え、その借金返済のために、ブラジル庶民がどれほどの苦労をしていたか、実体験していました。自分自身も給与を現地通貨クルゼイロでしか受け取れなかったために大変苦しい、悔しい思いをしたことを今も忘れることができません。
余談になりますが、当時の私の給与1200ドル(研修手当)を会社が送金してくれていました。しかし、私は米国ドルで受け取ることができません。貴重な外貨である米国ドルを政府が管理するため、米国ドルと現地通貨の公定為替レートで算出した、クルゼイロでしか受け取ることはできなかったのです。しかし、クルゼイロを持っていても1か月後には半分の価値になるため、受け取ったクルゼイロを「闇ドル屋」という非合法な通貨兌換店に行って、米国ドルに交換していました。しかし、公定レートと闇ドル屋での為替レートは3割ほど違っていましたので、給与を受け取った時点で3割ほど目減りしてしまうのです(1200ドルが800ドル弱になる)。それでも、1か月後に半分になるよりはましなので米国ドルに交換していました。また、日本で子どもが生まれる予定(途中から生まれた)だったので、交換した米国ドルの半分くらいの紙幣を手紙の中に入れ、日本で生活する嫁さんに仕送りしていました。そのため自分自身の現地での生活は悲惨を極めました。
ブラジルは美味しい果物の生産国として有名ですが、当時のブラジル庶民が口にする果物は、海外に輸出できない(外貨獲得の役にたたない)残り物ばかりで、私が下宿していた庶民中の庶民の家庭で出してもらう果物のデザートは、我慢して食べるしかない質の果物でした。美味しい果物は、資金を出している欧米や日本の人々が食していたのです。
今、これだけ国の借金が増えていても(GDPの2.5倍)、すぐさま国債暴落や日本円の暴落にならないのは、現時点では、国内資金で賄えていることが大きな理由のひとつです。
しかし、今後の50年を考えてみてください。団塊の世代が既に後期高齢者となっており、その世代が持つ金融資産は徐々に減少していきます(年金が増えず、物価高が続く中で、現役時代に老後のためと頑張って貯めてきた金融資産を取り崩すため)。
残念ながら歳には抗えず、その世代がだんだんこの世を去っていきますが、その世代の子ども世代は「就職氷河期」の世代であり、親の世代のように、多くの金融資産を持つことなく老後生活に入っていきます。それどころか、支援が必要な人たちが多いのです。それゆえ、こども世代が相続できたとしても、その次の世代、団塊の世代の孫の世代にまで相続できる充分な金融資産は残っていません。
それゆえ、今、借金を減らし、借金に頼らない体質の国、健全な財政状態にしていかないと、借金を外国に頼らざるをえない時代がやってくるのです。
可愛い孫の世代に嘗てのブラジルのような苦しい生活、苦しく悔しい思いをさせたくはありません。
3.経済成長論
党首討論や政策責任者による各党の政策論争を聴いていて違和感を覚えるのは、「借金があっても、借金を拡大しても、経済成長すれば対GDP比の借金比率は小さくなる。今現在の苦しい生活を少しでも楽にするために、給付や消費減税が必要だ。これらの政策により一時的に借金が増えても、経済成長できれば何とかなる」といった議論がまかり通っていることです。特に自民党が「経済成長論」を強調しています。冗談じゃありません。この30年間(少なくとも国際標準の米国ドルベースのGDPでは)一度も経済成長させられなかった自民党が「経済成長できれば」と訴え、強調しても全く説得力がありません。政権党である以上、実績で評価されるべきことです。そして、「失われた30年」のもっとも大きなきっかけと原因であるバブルの生成と崩壊、その後処理・対処もすべて自民党政権下の話であり、自民党政権以外の誰にも責任転嫁はできません。「野党は福祉、社会保障」「自民党は外交安全保障と経済」という時代はとっくに終わっています。日本経済を弱体化させ、経済成長できない体質にしてしまった原因は自民党政権にあります。
野党陣営はこのことをもっと強調すべきだと思います。
4.参議院選挙の特性
参議院選挙は本来は政権選択選挙ではなく中間選挙のような位置付けだが、今回だけは事実上の政権選択選挙だと言われています。そうだと思います。
しかし、国家理念や理念・政策を掲げ、政権の枠組みを示す衆議院選挙とはやはり違いがあります。
それは、「自民党政権の継続は許さない」と主張する、その理由がどれだけ異なっていようとも、「自民党政権継続阻止」という目的を掲げる政党、勢力はその一点だけで結集してもいい選挙だということです。
その思いがあるため、本メッセージでは自民党の主張の矛盾点をお伝えすることに徹しました。ホームページでは、様々な論考や具体的にではどうすればいいのか、ということを詳しく説明していますので、ホームページの各ページにも目を通して戴ければ幸いです。
吉良州司