感染の再拡大とGo toキャンペーンの是非
コロナ感染が止まりません。全国的にも毎日のように「過去最多」が続き、地元の大分県も最近は毎日「過去最多」を更新しています。また、鳥インフルエンザにも襲われてしまいました。
専門家は当初から「秋から冬になると感染拡大の可能性が高くなるので、コロナとインフルエンザの同時感染拡大が心配だ」との警笛を鳴らしていました。不幸中の幸いなのは、みなさんが基本動作のマスク着用と手洗い・うがいを励行していることから例年に比べインフルエンザ罹患者が大きく減っていることです。一方、コロナは晩秋から冬になるにつけ感染者数及び重症患者数が拡大し続けています。
欧米人に比べ日本を含むアジア系の人々のコロナ感染者数・感染率が低い原因について、山中京大教授が指摘した「ファクターX」は、一時はBCG接種の有無だとか、欧米人はネアンデルタール人の遺伝子も持っているからだ、との指摘もなされていましたが、今は、「湿度」が最有力となっているようです。案の定、専門家が指摘し危惧していたように、寒くなり乾燥してくるとコロナ感染が拡大しています。
政府は、「コロナ感染拡大防止と経済(を回すこと)の両立」と主張していますが、私には、「経済を回すこと」に比重が置かれているとしか思えません。
2020年8月5日付弊メッセージ<コロナ感染再拡大とGo to キャンペーンに思う>の中で私は次のように持論をお伝えしています(抜粋と一部要約)。
『コロナ感染の再拡大を受けて、政府対応の軸が定まっていません。Go to キャンペーンに関するアクセルとブレーキの問題、お盆時期の帰省についての混乱しかりです。
「Go to キャンペーン」の開始時期を含む是非についての私の考えを結論から言えば、時期尚早だと思います。今の政治の最大の問題は、与野党とも「やってる感」、「国民のために頑張っている感」を出すことが目的化していることです。その対応策が本当に国民のためになっているのか、足元の現在だけでなく将来に亘って国民のため、今苦境にある人の為になるのか、という視点が二の次になっているのではないかと疑問を持ちます。
コロナ感染が再拡大している最中に国民は、心の底から楽しめる旅行に出たいとは思いません。勿論、長く続いた自粛の反動として、久しぶりに羽を伸ばしたい、旅行に行きたいという若者や子ども連れの家族がいることは確かです。しかし、まだ不安が残る時期に、それも日を追って感染拡大する時期に「政府がわざわざ音頭をとって、しかも補助金を付けてまで」旅に出ることを促すことが今必要なのでしょうか。
壊滅的な痛手を受けている観光関連産業を救済することは極めて重要なことです。しかし、迎える旅館やホテルは、感染対策から、収容人数の半分程度しか受け入れることができない場合がほとんどです。<中略>
政府が音頭を取り補助金を出してまで支援するのは、人々の不安がなくなるか小さくなった時に実施すべきだと思います。それよりも、今は感染拡大防止に比重をおきつつ、観光関連会社の固定費を補助する政策が必要だと思います。』
上述した「ファクターX」について私は、「湿度」以外に日本人が持つ(人様に迷惑をかけてはならないという)良識の高さと、(時にはマイナス要素として働くこともありますが)今次コロナ禍対応ではプラスに働いている「世間体を気にする体質」もその要素だと思います。マスク着用は感染拡大防止の有効手段であるとの位置づけ以外に「マスクをしてないと白い目で見られる」ので、一種のエチケットとして着用している人もいます。
つまり、日本人は自らの良識で状況を判断し、また、世間体も気にするため、感染拡大中だと認識すると、旅行や外食に対して自ら行動制限をかけ自粛する体質を持っているのです。
このような体質を持つ日本人に対しては、やはり感染拡大防止対策に比重をおき、否、優先し、感染の終息や収束、少なくとも減少が見えてきた段階で、それまでの得べかりし売上・利益を少しでも取り戻せるようにGo to的政府支援を行うべきだと思います。
大分県は長い間、感染者ゼロが続きました。Go toキャンペーンの影響で感染者が出始め、増加する前までは、飲食業にもようやく地元客が戻ってきていたところでした。しかし、感染拡大により、地元民まで再び自粛的行動が広がりつつあります。地元客の戻りで何とか持ち直しはじめていた飲食業の方々の無念を思うと胸が痛みます。
よかれと思って実施し始めた政策の成果が出ない、成果が出ないどころかマイナスに働いていることが明らかになったのであれば、一度立ち止まり、Go toを止める勇気を持ってもらいたいと思います。コロナ禍対策は未知の世界との戦いです。誰も責めることはできません。一度立ち止まり、政策を見直す政府の勇気と英断を国民は支持し、応援すると思います。
吉良州司