吉良からのメッセージ

2021年3月25日

中国とどう向き合っていくのか 中国の経済的存在感 その2

前回のメッセージ「中国とどう向き合っていくのか 中国の経済的存在感 その1」では、中国を正しく理解し、正しく恐れ、正しく対応していくため、中国の経済的実態、特に世界経済における中国経済の存在感について、データを示しながら、お伝えしました。今回のメッセージも中国の世界経済における存在感と「買う力」についての第二弾をお伝えします。

何か私が中国の偉大さを強調しているように思わると困るのですが、経済活動の最前線にいない人、特に中高年世代は、数十年前の記憶を基にした「図体だけ大きいが、経済の質、技術力、人財力は遅れたままの途上国」といった精神的優越感の域を出ない中国観が残ったままであり、過度なナショナリズムや対中強硬論にもつながっています。米中覇権争いの狭間にあって、決して歩むべき道を誤ってはならないとの思いから、事実、実態を正確に理解・把握する必要性を痛感するが故のデータ紹介であることをご理解賜りたく。

1.中国の「買う力」のすさまじさ ~中国のインターネット通販市場規模の半端ない大きさ~

前回お伝えした、自動車販売台数における中国の圧倒的な存在感に加え、コロナ禍で急激に伸びる通販業界においても中国市場の巨大さが際立っています。
世界の通販業界の市場規模の何と54.8%が中国市場で、これは米国16.6%の3.3倍、日本3.3%の16.6倍という巨大さです。
中国のアリババ・グループ(ジャック・マーCEO)の決済機能部門である「アリペイ」のユーザーは12億人を突破して今や世界最大のモバイル決済会社となっています。
そのアリババのネット通販部門は2020年11月11日の「独身の日」オンラインセールの一日だけで、日本円にして何と7.9兆円の売上がありました。日本の通販業界の売上高ランキング上位300の社の年間合計売上高が約7.6兆円(通販新聞社調査)ですから、その異常なまでの巨大さがご理解戴けると思います。

この「巨大市場としての中国「巨大消費者市場の中国」を牽引しているのは、急速に発展する中国沿岸部で暮らす中流階層で、一人当たりGDPが優に1万ドルを超える人口が3億人と言われています。この沿岸部の中流階層がコロナ前は大挙して日本に押し寄せ、爆買いをしていたのです。

中国のIT業界には今「996」という言葉があるそうです。今、我が国では「働き方改革」が叫ばれていますが、深圳など中国南部のIT業界では、その逆をまっしぐらに走っていて、朝9時から夜9時まで週6日働くことが標準となっているとのこと。このようにして、嘗ての我が国の「モーレツ社員」的働き方で、中流、上流へと駆け上がっている、と中国の専門家から聞きました。

このように中流階層の増大により、生活水準が上がるにつれ、食生活も向上してきます。食生活の向上に伴い、肉や乳製品の輸入も増大しています。

2.未だに地政学的争奪戦が繰り広げられる化石燃料を買う中国の力

我が国も「2050年カーボン・ニュートラル」を打ち出したように、世界的な地球環境保全政策、再生可能エネルギー、水素利用エネルギーの開発・普及が推進される中、将来的には化石燃料の重要度は低下していくと思われますが、新旧エネルギー・インフラが併存する向こう30年、否、実際にはそれ以上の時間がかかると思いますが、化石燃料も引き続きエネルギーの中心であることは間違いありません。化石燃料、特に石油や天然ガスは埋蔵地・生産地が偏在するため、地政学的な争奪戦が繰り広げられます。
その化石燃料の代表選手である石油、石炭、天然ガスの輸入量において、単独国として一番シェアが大きいのは中国です。石油(2019年)16.7%、石炭18.1%、天然ガス(パイプライン+LNG)13.5%と世界最大の輸入国となっています。LNGは現在日本が世界1位(2019年21.7%)ですが、中国(現在17.5%)が今年には世界1になると予測されています。
地政学的な意味合いが大きい化石燃料の輸入量が大きいということは、国際政治上の影響力が大きいことを意味しますので、世界経済のみならず国際政治においても中国の存在感、影響力が増していることが見て取れます。

中国の世界における経済的な存在感については本メッセージを最後にしますが、一旦、違うテーマを扱った後、今度は、中国の政治状況や軍事的側面も取り上げたいと思っています。

我が国、否、世界にとって中国は安全保障上、外交上は問題だらけの国ですが、今や我が国や欧州諸国とは経済的相互依存関係にあります。ある意味、現時点では米国ですら経済的には相互依存関係にあります。一方、南シナ海・東シナ海、尖閣、香港・チベット・ウイグルにおける中国の剛腕的姿勢については、政治的・人権的視点から、決して譲ることができません。
何度も繰り返して恐縮ですが、この経済的相互依存関係と決して譲ることのできない政治的立場とのバランスをどのように取っていくのか、我が国にとって最大の課題です。
しかし、確実に言えることは、地政学的に引っ越しできない以上、何とか共存共栄を図っていくしかないと思います。中国の台頭については、心の底から悔しいし悩ましいのが本音ですが、2回シリーズで見てきた世界経済における中国経済の圧倒的な存在感を認識した上で、中国と向き合うことが重要であると痛感します。

吉良州司

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