吉良からのメッセージ

2023年6月8日

ウクライナのダム破壊に思う 一刻も早い停戦を

ウクライナのヘルソンにおいてダムが破壊され、人為的大洪水により人々の生活が壊滅状態になっています。
私は2022年3月8日のメールマガジン<ウクライナ問題を考える その4 停戦合意の条件>の中で次のように訴えていました。

『<中略>戦前、中国からの撤兵さえコミットすれば、米国との戦争を回避できたのに、軍部の暴走を止められず、あまたの犠牲者をだして国土も焼野原になってしまいました(因みに、ABCD包囲網を敷かれたので戦争に踏み切るしかなかった、という歴史観を持つ人がいますが、それは、原因と結果をはき違えています。中国からの撤退をしないから禁輸、禁油されてしまったのです)。また、誰がどう考えても敗戦間違いないのに「一億玉砕」を掲げ、大和民族が滅び去るまで戦おうとする危機もありました。一番悔やまれるのは、あと半年早く降伏していれば、沖縄戦も東京大空襲も広島・長崎の悲劇もなく、多くの命を救えたことです。

今、自分では血を流すつもりのない、米国、NATO諸国、世界の国々がいかに正義を叫ぼうと、短期的にロシアの暴走を止めることはできません。ロシアと血を流してでも戦い、正義を貫くという覚悟と実行がない中で、いくら正義を叫んでもロシアの非正義を正すことはできません。
しかし、今現実に命を奪われ、自分の街が、学校が、病院が、生活が壊滅状態になりつつあるのはウクライナであり、ウクライナの人々なのです。外野席から「気合を入れてメガホンで応援するから、ウクライナ頑張れ」と遠いところから正義の旗を掲げて叫ぶ国々、人々ではないのです。

事ここに至っては、ロシアの「力」に屈したと言われようとも、ウクライナの人々の命を守り、穏やかな生活を取り戻すこと以上に大事な正義はありません。

何故、私がここまで早期停戦にこだわるのか。それは、予見不可能なプーチン大統領が相手だからです。否、予見できることもあります。それは、ロシア通で有名な佐藤優さんから聞いた話なのですが、ロシア軍は非戦闘員も含め無差別に人を殺害しても何とも思わない傾向があることです。前々回のメルマガで「ロシアがシリア内戦に深く関与し始めたところ、一挙にアサド政権が勝利した」ことを紹介しました。それは何故か。戦闘中、例えば、女性や子供を盾にして敵方の戦闘員が抗戦している場合、普通は盾となっている人を殺傷しないように配慮しながら戦闘員だけを標的にしますが、ロシア軍は敵方戦闘員に加え、盾になっている女性や子供など非戦闘員を含む全員を無差別に一挙に殺害してしまうからです。このようなロシア軍ですから、プーチン大統領が、ウクライナを支援する欧米諸国への威嚇の意味も込めて、核の使用に踏み切る可能性を無視できないのです。
このようなロシア軍を相手にする中で、停戦が遅れてしまうと、ウクライナのどこかの都市が第二の広島・長崎になってしまう可能性があることを危惧するのです。プーチン大統領が相手です。一刻も早い停戦合意を成立させなければなりません。<以下割愛>』

1年3か月前に上記メールマガジンを発信し、最近では外務委員会においても停戦の必要性を訴え続けているのは、今回のようなダム破壊を含むウクライナの人々の犠牲や生活破壊をこれ以上生じさせないためです。

ウクライナを支援する西側諸国の政府や多くの国民もウクライナ軍による「反転大攻勢」に拍手喝采を送っています。しかし、まともに今戦えばロシアが劣勢だからこそ、今回のようなロシアによる生活インフラの破壊、そして今後ありうる原子力発電所の破壊、核の使用などのリスクが増大するのです。かつての日本のような沖縄戦、東京大空襲、広島・長崎の悲劇をこの世界で二度と生じさせないためにも早期停戦が必要なのです。
早期停戦の具体的条件については、これまでのメールマガジンにて何回もお伝えしていますが、長くなっていますので、吉良州司ホームページの2022年3月25日発信メールマガジン<ウクライナ問題を考える その9 今一度停戦合意の必要性>をご参照願います。

吉良州司